「これ、和泉くん……?」
「そう。本当のね。今トイレ行ってるけど、すぐ戻ってくるから」

画面に映る和泉くんは、昔と変わっていなかった。
人懐っこい笑顔でこちらを見ている。
高校一年生の時のまま大人になった、本当にそんな感じだった。

そして……やっぱり、奏一くんと似ていた。
奏一くんを愛想をよくして目尻を少し下げればうり二つだ。

今まで緊張していたくせに、懐かしさから自然と笑みが浮かぶ。

「とにかく、電話で話した通り、私が会ったこの和泉が正真正銘の和泉孝広よ。
莉子が今一緒に住んでる男が誰だか知らないけど、いいように騙されてるんじゃないの?」
「奏一くんは……私を騙したりなんかしてない」
「奏一? それ、一緒に住んでる男の名前?」
「……うん。奏一くんも自分は和泉くんじゃないって言ってた。
騙してて悪かったって……」

まだ信じ切れない思いで言うと、佐和ちゃんは「やっぱりね」とオーバーリアクションをする。

「ほら、騙してたわけでしょ。和泉だって言い張って他人を装ってたんだから」
「でも……それは、私が勝手に和泉くんだと思ってたから合わせてくれてるだけかも」
「なんで見ず知らずの他人が莉子に合わせて和泉を演じる必要があるのよ」
「それは……っ」
「――莉子?」

声を張り上げた時、後ろから名前を呼ばれた。
振り向いた先には……高校の頃のままの和泉くんがいて、思わず言葉を失う。