きっと佐和ちゃんの勘違いで、和泉くんは和泉くんなんじゃないかな。
そう思い込みたい自分と、和泉くん……奏一くんの優しさ。
それと、佐和ちゃんの言葉と、それが引っかかってる頭。
奏一くんへの、好きの気持ち。
色んなモノに板挟みされて、息が苦しい。
駅前までの道をのんびり歩いているなんてできずに走って向かった。
夜から雨が降り出すっていう空には厚い雲がかかっていて、そんな天気も息苦しさを助長されているみたいに思えた。
さっきまであんなに幸せな気分だったのに……。
青天の霹靂なんて言葉、初めて使うけどまさにそんな感じだ。
頭上に分厚く広がる雲に、心が押しつぶされそうで、そんな不安から逃げるように走った。
佐和ちゃんが指定した駅近くのカフェは賑わっていて、その中から佐和ちゃんを探し出すのは大変な作業だった。
気持ちばかり焦って全然見つけ出せないでいる私に気づかせるように佐和ちゃんが立ち上がって手を振ってくれて、やっと気づけたほど。
それはお店の込み具合というよりは私の精神状態の問題だったのかもしれないけど。
佐和ちゃんの隣に、一緒にいるハズの和泉くんの姿がなくて、少しホっとしてしまう。
席に着くとすぐに、佐和ちゃんが「これ見て」と携帯を差し出した。
画面に映る男の人を見て……懐かしさがじわじわと広がっていく。



