「そんな事言われて黙って出てきたのか?」
「黙ってたわけじゃないよ。
浮気だとか別れる事は仕方ないけど、急に部屋出て行けって言われても困るし。だから、言い返したけど……」
「けど、何?」
「私、今まで彼氏の言う事にはむかった事なかったからか、言い返したらすごく怒鳴られて……殴られて力ずくで追い出されたの。
荷物もクローゼットに入ってた物とかを投げつけられて……それでこの荷物」
冗談話でも言うみたいに笑ってみたけれど、和泉くんの顔のしわは戻る気配がなかった。
怒っているような、軽蔑でもされているような、嫌悪感の詰まった瞳に見つめられて堪らずに目を伏せた。
自分のふがいなさは分かっているだけに、それを責められているようで、見ていられなかった。
「だから左頬が腫れてんのか」
「……うん。でも別にそんな腫れてるわけじゃ……」
「十分腫れてる。まぁとにかく、それで自殺?」
「え、ううん。自殺なんてしないよ。
途方には暮れてたけど、そんな事考えてないから大丈夫」
「あんな思いつめた顔して川眺めてたのに?」
「川眺めてたのは、飛び込もうとしてたわけじゃなくて……。
これからどうしようか考えてたらどんどん思考がずれていっちゃって、なんとなく河童とかいるのかなとかくだらない事考えてただけで……」



