「つまんなかったらこんながっついて手出したりしないし、第一、欲情しない」
「……私に欲情してくれたって事?」
「もう身を持って十分分かったろ」

自嘲したように笑う和泉くんに、嬉しくなってにやけながらぎゅっと抱きつく。

まるで夢みたいだった。
だって和泉くんとこんな風になれるなんて……幸せすぎて本気で夢じゃないかと疑うほどだ。

「私、好きって言ったっけ?」

そういえばどうだったっけと思って聞くと、和泉くんは私の背中に手を回しながら笑う。

こんなによく笑う和泉くんは初めてだし、和泉くんも機嫌がいいのかもしれない。
そう考えるとまた私も嬉しくなって、口角がどんどん上がって歯止めが利かなくなる。
にやけて下がってきた目尻とくっついちゃうんじゃないかってくらい。

「聞いた。何度も」
「何度も?」
「莉子、抱いてる間ずっとうわごとみたいに言ってたから」
「そうなの……? 完全に無意識だったけど……うるさかった?」

それはかなり鬱陶しいかもしれないと不安になって聞いたけれど、返ってきた声はまだ上機嫌のままで。