恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―



「ごめんね……。困らせたいわけじゃなかったの。
和泉くんが私なんか好きじゃないのは分かってるのに……。
ごめん。私、勘違いしてばっかりで……本当、自分でも嫌になる」
「そういう意味じゃない。俺の気持ちまで決めつけるな」

笑顔でいるのは無理そうだと思って俯いたのに。
和泉くんがすぐにそんな返事をするから、ゆっくりと顔を上げる。

和泉くんはつらそうな顔のままだったけれど、瞳はしっかりと私を映していた。

「莉子が勘違いしてるとしたら、それは自分自身の気持ちだろ」
「自分のって……私の?」
「おまえが好きなのは俺じゃない。
……過去の俺で、今の俺が好きなわけじゃない」
「違うよっ! 私は……っ」
「高校の時の気持ちが一時的に蘇って、勘違いしてるだけだ。
中途半端にうまくいかなかった恋愛だから、偶然俺に会った事で余計に変に気持ちが昂ぶってるだけで……」

何もかも分かっているような口調で話す和泉くんを、違うと大声を出して止める。

さっきまで顔をしかめていた和泉くんは、いつも通りの無表情に戻っていた。
いつも通り感情がないような瞳で、私を見ていた。

そんな、あの頃の和泉くんとは違う、今の和泉くんを睨むように強く見つめる。