引くなら今のうちだ。
とにかく大丈夫だからって笑って会話を終わらせれば、和泉くんだってそれ以上突っ込んで聞いてきたりしない。

けど、気持ちを分かって欲しいって想いも私の中にはあって。
叶わない想いでも伝えたくて。

変な空気になったのは、和泉くんが私の気持ちに応えられないからだって事は分かってた。

それでも伝えたいなんていうのは私のエゴだけど、数年前みたいに中途半端な拒絶をされて引くのは、もう嫌だった。
気持ちをなかったモノにして欲しくなかったのかもしれない。

あの時はそれで我慢できたけど、今はそんな宙ぶらりんな結果じゃ嫌だった。
あの時よりも気持ちが大きいだけに。

何も言わずにじっと見つめている先で、和泉くんはつらそうに顔をしかめて目を伏せた。
その顔に、あの時の和泉くんが重なって胸が痛む。

私……また困らせてる。

好きなのに、なんで困らせる事しかできないんだろう。
気持ちに素直になるほど、和泉くんを困らせてしまうなんて……なんて悲しい事実だろう。