「大野に罵詈雑言を浴びせて挙句本当にいるのかも分からない“他のみんな”が納得しないだとか……。
別れさせようとしたのかもしれないけど、岩上の今日の行動すべてが俺には理解できない。
俺の事を好きだって思ってくれているなら、もう近づかないで欲しい。
俺が岩上に望むのはそれだけだ」

悲しさに顔を歪めてぱっちりとした瞳に涙をためた岩上さんが、くるっと背中を向けて部屋を出て行く。
その後ろ姿をただ見ている事もできなくて思わず追いかけようとした私の腕を、和泉くんが掴む。

玄関のドアが閉まる音が部屋に響いた。

「おまえが行ってもどうにもならないし、恨まれるだけだろ。
岩上はおまえの優しさを素直に受け取るようなヤツじゃない」
「でも私、嘘ついてるし……。このままじゃ申し訳ない気がして」

だって本当は彼女じゃないのに。
そう言った私を、和泉くんがじっと見つめた。

黙って熱を持った瞳に見つめられて胸が跳ねる。
それと同時に、瞳が熱を持ってるわけじゃなく、もう和泉くん全体が熱を持ってるんだったと思い出して、寝てた方がいいと言おうとした時。

「じゃあその嘘を本当にすれば問題ないだろ」

和泉くんが言った。
じっと見つめる瞳はそのまま私を捕えていて、掴まれた腕もそのまま。