「和泉さん、仕事もすごくできるし外見もいいから、社内でもすごく人気が高いんです。
片思いしてる女性社員もたくさんいるし。
その人たちが、あなたの存在を知ったら納得するとは思えません」

そこまで言われて、ああそうかと思った。
岩上さんは和泉くんが好きなのかって。

片思いしている女性社員の中には、岩上さんも含まれてるんだ。
だからこんな感情的になってるのかと、今までの事がやっと腑に落ちた。

体調不良でふらふらの和泉くんを部屋まで送ったら、彼女がいるから部屋には上がるなって言われて、ショックを受けているところに私が呑気に買い物袋下げて帰ってきて。

やきもち焼かせようとして言ったイヤミも通じずに、お礼なんか言われて。

それはイライラするかもしれない。
岩上さんがずっとしかめっ面な理由が分かって、申し訳なくなる。

岩上さんと同じ立場でありながら、彼女だなんて嘘をついてしまった事に。

私だって、ただ和泉くんに片思いしているだけで、立ち位置的には岩上さんとなんら変わらないのに。

「――俺と大野の関係を、誰かに納得させる必要なんかない」

俯いていた視線を上げて、はっとする。
いつ起きたのか、自分の部屋とリビングを繋ぐドアに寄りかかるようにして立っている和泉くんに気づいて、慌てて駆け寄った。