「あんな状態で会社に行くなんて言ったら止めません?
和泉さんが本当に大事なら、普通そうすると思いますけど。少なくとも私だったら止めて病院に連れて行きます。
和泉さんが心配じゃなかったんですか?」
「……いえ、心配でした」
「なのに自分は仕事ですか?」
岩上さんが仕事か聞いたのは、私がスーツ姿だったからだ。
「仕事というか、派遣の面接で」
「面接? じゃあ今は無職って事ですよね?
この部屋だってもともと和泉さんの部屋なんでしょう?」
この部屋が和泉くんのモノだって言うのは、ポストの表札を見たのか、それともここが和泉くんの勤める会社が建てたマンションだからとかそういう理由からなのか。
それは分からなかったけど、言われた事は事実だし、強い口調で言う岩上さんに素直に頷いた。
「無職で和泉さんにお世話になっておきながら、よく自分の事が優先できましたね」
まるで責めるような口調が、どんどん胸に突き刺さっていく。
確かにその通りだと思った。
和泉くんがいつ帰ってきてもいいように、家にいるべきだったのかもしれない。
いくら大人の男の人だって言っても、朝の状態を見る限り、身の回りの事さえ満足にできるとは言えないのを分かっていたのに。



