「さっき、和泉さんから話は聞きました。一緒に住んでる方がいるって。
あなたがそうなんでしょう?」
「あ、はい。すみません。大野といいます。
あの……ところで、和泉くんを送ってきてくださったって事でしょうか」
岩上さんは、尚も怪訝そうな顔のまま答える。
「午前の仕事を終えて、和泉さんはそのまま帰ろうとしていたんですけど、あまりにふらついていたので心配で送ってきたんです。
それが13時過ぎの事で、今は寝てますけど」
「そうだったんですか……。すみません。朝から調子悪そうだったんですが、どうしても今日外せない仕事があるって事だったので……。
看病させてしまって申し訳ありません」
まだ業務時間中ですよね、と謝りながら言うと、岩上さんは、いえ、と首を振る。
ずっと不服そうにしかめられていた表情が、ここにきてようやく変化する。
……あざ笑うような感じに。
「朝、調子悪い事に気づいていたのに、よく送り出せましたね。
しかも、和泉さんがいつ体調が悪化して会社から帰ってくるかも分からない状態なのに、平気で外出するなんて……私だったら考えられないけど」
豹変したってほどでもないけれど。
急に私をバカにしたように笑みを浮かべて話し出した岩上さんに、すぐ言葉が出てこなかった。



