恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―



心配して色々言う私に、和泉くんがわずかに笑う。
その顔にもやっぱりつらさが見てとれたから、そんな和泉くんが心配で、不安そうな顔をしていたのかもしれない。

和泉くんはまるで安心させるように微笑んで私の頭にぽんと手を置く。

「大丈夫だから」

行ってくる、と言った和泉くんの背中が見えなくなるまで見送る。
触れられた頭に残った熱が、いつもよりも高くて、後ろ姿に不安ばかりが募った。


大丈夫なのかな、電話しようか。
でも仕事中だし、連絡がないって事は大丈夫って昔の人が言ってたからきっと大丈夫なんだよね。

だけど、万が一どこかで倒れていたらどうしよう……。

親切な人が通りかかって救助してくれていたらいいけど、和泉くん美形だし、変な人に見つかったらどこかに連れ去られちゃったりしないかな……。
いつもだったら大丈夫だろうけど、今朝の状態を見る限りでは私でも簡単に誘拐できちゃいそうだったし。

私が勝手に心配しているだけで、決して和泉くんのせいってわけじゃないって事だけは先に言っておいた上で言うけど。

和泉くんにまつわる色んな不安ばかりが脳裏を激しく渦巻くおかげで、面接はどこか心ここにあらずって感じの受け答えになってしまった。