ディスオーダー【短編集】


 ──読み終えた私は、しばらくの間、開いた口が塞がらなかった。


 なんだ? この日記帳は。
 これがマナが死ぬ間際に残した言葉だというの?

 この日記帳を読む限り、マナは世界を怨んでいた?

 ユキくんを奪った世界を怨んでいたとでもいうの?


 ひとつ分かったのは、マナの性格が変わってしまったのは、近いうちに訪れるであろう世界への裏切りのために、自分の性格を偽ることで世界を騙していたということ。

 どうして世界を裏切るために(おこな)っていた行動が〝自分の性格を偽ること〟なのかは分からないけれど、それがマナが出来る唯一の行動だったんだろう。


「天気が、雪……」


 そうだ。

 マナが自殺した日……あの日は道の上に降り積もるほどのかなりの雪が降った。この地域では珍しく、吹雪いてもいた。

 だから、マンションの屋上から飛び降り自殺をしたマナの遺体を見付けるまでに、かなりの時間がかかったんだっけ。


 ……降り積もる雪が覆いかぶさっていて、完全に身体が埋もれていたから。


 降り積もった雪がクッションになって助かる……なんてことはなく、高くから思い切り地面に叩き付けられたマナは、呆気なく死んでしまった。警察たちからは「ほぼ即死で間違いないだろう」と聞かされた。

 マナが空から降る〝雪〟を彼氏の〝ユキくん〟と見間違えたのか、はたまた、なぞらえていたのかは今となっては分からない。

 分からないことだらけ。 

 けれど、これだけは言えるわ。



「『さようなら!My World(私の世界)!』って、マナが屋上から飛び降りる前に叫んでいた言葉なのね……」



「通りで、醜いと思ったわ」



END.