……だから。
「私は……抵抗する間もなく、世界崩壊に巻き込まれちゃってる、かも?」
「安易に想像できるでしょ?」と、場の空気を悪くしないよう、またおちゃらけた感じで言ってみた。けれど、ユキくんはどうしてもこの場を暗いものにしたいのか、真剣な表情のままでこう言った。
「そうなる前に、僕がマナちゃんを守るよ」
「……っ」
……それは、ずるい。そんなカッコイイ顔でそんなカッコイイことを言わないでよ。ときめいちゃうじゃん。
「私も……。ユキくんを守りたいとは、思ってるよ」
それが実際に叶うかは、別として。
ユキくんは私の含みのある言い方には何も触れず、ただ、優しく「ありがとう」と微笑んでみせた。
赤信号なのでとまっていた車たちは、青信号になるのと同時に動き出す。
青は前へ進め、が、〝常識〟だから、身を委ねるように、ユキくんが運転する車に揺られる。
刹那──バッコーンッ!!!
「きゃあっ?!」
刹那、ユキくんの車が大きく揺れる。
くるくる、くるくる。横に滑るようにして回転した車は、やがて大きな衝撃と共に動きをとめた。外からはガヤガヤと、たくさんの人の悲鳴や叫び声が聞こえる。
……何があったの?
遠ざかる意識をなんとか手放さないように堪えていると、やがて目の焦点は合ってきて、キーンと鳴っていた耳鳴りもおさまってきた。
意を決して思い切り目を見開くと、そこにあったのは目の前のガラス越しに見える〝壁〟だった。〝壁〟? ……はて? なんの? そんなの、〝家の壁〟に決まっている。
え? 家の壁? 広い道路のど真ん中を走っていたのに、なんでそんなものが、急に目の前に……?
まだどこかぼんやりとした頭で、辺りを見渡す。外の状況も気になるけど、真っ先に隣のユキくんに目を向ける。
──ユキくんは頭から血を流し、白目を向いて……死んでいた。
「きゃぁぁぁあああっ!!!」
「おい!この中の人、生きてるぞ!早く出してやれ!」
「ユキく……ユキくんが……!」
ユキくんに指一本触れることが出来ないまま、私は見知らぬ男性に車の中から助け出された。
「私は……抵抗する間もなく、世界崩壊に巻き込まれちゃってる、かも?」
「安易に想像できるでしょ?」と、場の空気を悪くしないよう、またおちゃらけた感じで言ってみた。けれど、ユキくんはどうしてもこの場を暗いものにしたいのか、真剣な表情のままでこう言った。
「そうなる前に、僕がマナちゃんを守るよ」
「……っ」
……それは、ずるい。そんなカッコイイ顔でそんなカッコイイことを言わないでよ。ときめいちゃうじゃん。
「私も……。ユキくんを守りたいとは、思ってるよ」
それが実際に叶うかは、別として。
ユキくんは私の含みのある言い方には何も触れず、ただ、優しく「ありがとう」と微笑んでみせた。
赤信号なのでとまっていた車たちは、青信号になるのと同時に動き出す。
青は前へ進め、が、〝常識〟だから、身を委ねるように、ユキくんが運転する車に揺られる。
刹那──バッコーンッ!!!
「きゃあっ?!」
刹那、ユキくんの車が大きく揺れる。
くるくる、くるくる。横に滑るようにして回転した車は、やがて大きな衝撃と共に動きをとめた。外からはガヤガヤと、たくさんの人の悲鳴や叫び声が聞こえる。
……何があったの?
遠ざかる意識をなんとか手放さないように堪えていると、やがて目の焦点は合ってきて、キーンと鳴っていた耳鳴りもおさまってきた。
意を決して思い切り目を見開くと、そこにあったのは目の前のガラス越しに見える〝壁〟だった。〝壁〟? ……はて? なんの? そんなの、〝家の壁〟に決まっている。
え? 家の壁? 広い道路のど真ん中を走っていたのに、なんでそんなものが、急に目の前に……?
まだどこかぼんやりとした頭で、辺りを見渡す。外の状況も気になるけど、真っ先に隣のユキくんに目を向ける。
──ユキくんは頭から血を流し、白目を向いて……死んでいた。
「きゃぁぁぁあああっ!!!」
「おい!この中の人、生きてるぞ!早く出してやれ!」
「ユキく……ユキくんが……!」
ユキくんに指一本触れることが出来ないまま、私は見知らぬ男性に車の中から助け出された。



