しかも──。
「ちょっとー!だれよこれー!私の机の上に花瓶を置いたのー!」
──しかも、かなり悪質なイジメ。
ご丁寧に綺麗な花まで用意しちゃってさぁ。みんな、そんなにも私のことが嫌いなわけ? 私、何かした?
この花と花瓶の意図を知りたくて、周りのみんなに問い掛けるように声を発しながら辺りを見渡すけれど、みんなは各々楽しそうにクスクスと笑っているだけ。
なるほど……困惑している私を見ることが楽しい、と。こんなことをして何が楽しいのかしら……私にはさっぱり分からないわっ。
プリプリと怒りながら、花瓶を退かそうと手を伸ばした瞬間──。
「あれ?」
花瓶には触れられず、そのまま手はすり抜けてしまった。
何が起きたのか理解できず、呆然とする私を他所に、担任の竹田先生が教室に入ってくる。
「えー、皆さんに悲しいお知らせがあります。行方不明とされていた倉橋さんですが、昨夜、ご遺体が発見されました」
昨夜に……私の……遺体?
先生の言っていることを立ち尽くしながら聞いている私は、花瓶に触れられないことといい、すべてを思い出す。思い出してしまった。
──私、数日前に、死んだんだ。
学校から帰る途中、突然背後から現れた人にナイフで刺されて。死ぬまでの間があまりにも一瞬すぎたから、そのこと自体、忘れてしまっていただけで……。
その後のことは記憶にないから、私を殺した犯人は私の身体をどこかへと運んだんだろう。動機とか目的とか、最早何もかも分からないことばかりだけれど。
そうか。みんな、私のことを意図的に無視していたわけじゃないんだ。霊体になっていたから、見えなくなっていただけで。そうか。悲しいことに変わりはないけれど。そっか……。
ん?
いや、待てよ?



