「あなたのことも、何度かうちで見かけたらしくてね。
明るくて可愛らしいお嬢さんだなって、思っていたらしいわ。
嶋田くん、お母さんは早くに病気で亡くしてて、お父さんは今、体悪くして入院してるの。
嶋田くんのお父さんの会社、嶋田電気さんとは、うちも古くから付き合いがあって。
お父さんからのお願いでね、こうしてお見合い相手を探してるんだけど」



ユリエさんは、どこか興奮しながらそう説明してくれた。
正直、ちょっと面倒だなあ、と思う。



「嶋田光樹くん、35才。
コピー機大手会社の『KIROO』で、修理業務を主に担当してる。
年収はだいたい、500万……くらいだったかしら。
趣味は映画鑑賞。
ギャンブル、酒、たばこは一切やらない。
いずれは嶋田電気を継ぐことになるかもしれないけれど、同居は条件じゃないわ」



「はあ……」



嶋田光樹くん35才を、もう一度眺めてみる。
作業着を着たら似合いそうだな。
肉よりは、魚の方が好きそう。
発泡酒を1本飲んだら、顔を真っ赤にしそうな感じ。



「どうかしら?
無理にとは言わないけれど、条件はいいと思うわよ」


……条件。
そうか、結婚というものは、条件で決めるものなのか。
しげしげとユリエさんの顔を見てみる。
この人は社長と結婚して幸せだったのかなあ、とか。
やっぱり条件で結婚を決めたのかなあ、とか。