「あ、あーー……」
とりあえず、笑顔を返してみる。
私、顔がひきつっていないだろうか。
「見に来てくれたんですね! 嬉しい」
私の心中などお構いなしに、紅は見事なまでの無邪気スマイル。
いや別に、あんたを見に来た訳じゃないんですけど……
てか、何? その、私の彼のためにありがとう的な。
ムカつく!
「いや、あの、別に……」
「どうして、そんな端っこに居るんですか?
真ん中の方で見ましょうよ! こっちです!」
ツカツカと近付いてきて、無遠慮に私の腕をひっぱる紅。
見ましょうよ?
見ましょうよってことは、暗に「一緒に」ってこと?
え? は? なんで?
紅に引き摺られるようにして、二人でど真ん中の席に座る。
え?
何で私が紅と一緒に見なきゃいけないわけ?
そんな疑問などお構い無し。
紅は瞳をキラキラさせながら、ステージを見詰めている。
その横顔を眺めながら、私は小さな溜め息を吐いた。
なんなんだろう。
この子。
あ、もしかして拓と同じタイプの人間?
無邪気を通り越した無神経?
ほんでもって、無自覚?
……絶対、女友達いないでしょ。
「あ、始まりますよ! ミズキさん」
私の下がり行くテンションとは逆に、紅のテンションはどんどん上がって行くようだ。