時間まで、もう少し。
新しいワンピースに袖を通す。
おまじないをかけるように、丁寧に。
鏡の前に立ってみる。
うん、悪くない。
それから念入りに化粧をする。
今日のために、新しいマスカラとリップを買った。
リップは、少しオレンジの入ったピンク色。
約二ヶ月ぶりに拓に会う。
いや、厳密に言えば拓に会いに行くわけではないけれど。
ドキドキしない訳がない。
どんな顔をしていればいいのだろう。
笑えるだろうか。
胸の鼓動がうるさいほど高鳴っている。
美容院では髪を軽く巻いてもらい、耳の後ろでふんわりとしたお団子に結んでもらった。
靴にパールがついているので、パールの髪飾りもつけてもらう。
それから、ラメスプレー。
光の中で、微かにだけれどキラキラと光る。
耳にも、小さなパールのイヤリング。
薄いピンクのネイルも着けてくれた。
鏡に写る、まるで別人のような自分に溜め息が出る。
女の子ならいつも、本当はこのくらい気合いを入れていないといけないのかな。
いつもの私はグダグダすぎて、あれじゃあ拓にだって浮気されちゃうし、いつかはこうくんにだって捨てられちゃうかもしれない。
女って、面倒臭い。
けれど、面倒臭いからこそ。
楽しみたいだけ楽しめるのだ。
変身。
悪くないじゃない。