拓からの連絡は、あれからまだ一度もない。


年末年始を必ず我が家で過ごしていた拓。
ちゃんと食べているのか、風邪を引いたりしていないか、気にならないと言ったら嘘になる。

拓は酔うと無茶をしてすぐに風邪を引くし。
食事も自分ではちゃんと作らない。
お金もないだろうし。

……餓死してたりしないだろうか。
寒い部屋の中で倒れてるとか。
もしや孤独死?

ぬくぬくとこたつに当たりながら、拓が好きだった伊達巻をかじりつつぼんやりと考えた。

いやいや、と頭を振る。
拓には紅がいる。
私の出る幕はないはずなのだ。




「瑞季、今日は嶋田くんと初詣でしょ。
そろそろ来るんじゃない?
早く支度しなさいよ?」



「あっ、そうだった」



「しっかりしなさい。
新年早々、待たせるなんて失礼よ」



こたつで雑誌を読んでいる母親に急かされ、慌てて支度を始める。

別れた男の心配をして、時間に遅れるなんて確かに失礼極まりない。
この思考回路、どうにかしなきゃ。

ああ、でもこの寒いのに、外に出るのは億劫だなあ。
暖かい部屋の中でまったりするのが一番なのに。

ブツブツ言いながら鏡の前で頭のお団子をくくっていると、ピンポーンと間抜けなインターホンが鳴った。



「あけましておめでとう」


「あ、おめでとう、ございます」



ドアを開けると、新年早々こうくんは爽やかな笑顔だ。
吐く息が白い。