そう、坂下さんのお母さんは
テレビでもとても有名な
料理研究家の坂下 やよいさんだった。
一般的な家庭料理にプロの技を
ほんの少し加えることで劇的に
お洒落で美味しいメニューに変えたりと
その気さくなキャラもあって
今、女性達に注目の料理研究家なのだ。
ついこの前も独り暮らしの
女性向けに出版された
『チャチャッとランチで
幸せゲット!』という
料理本がめちゃくちゃ売れてるって
テレビで紹介されてたっけ?
そんな私も一冊持ってるけど……。
だからこの前、店で坂下さんから
この事実を聞いたとき
店中に響き渡る声で叫んだんだ。
本当に驚いたもん。
あんな有名な人がお母さんだなんて……。
そして今、もう一人ここに
叫んでいる人が……
「マジかぁ~っ!」
サトルさんも知らなかったと言う……。
それこそマジか?
「お前、今まで一言もそんなこと
聞いてねえぞ。」
「はい、言ってませんから。」
「普通、言うだろが?」
「俺は普通じゃないのサトルさんも
知ってるじゃないですか。」
無理もないよ。
私だって本当に驚いたもんね。
だけど、確かに言われてみれば
坂下さんてお母さんにそっくりなんだよね。
坂下やよいさんってほんと、美人だもん。
「そ、そ、それにしても
別に君のお母さんが坂下やよいさんで
あっても私は何ら困ることはないのだが。」
と、吉澤社長。
うそ。
明らかに動揺してるじゃない。
だって人気料理研究家だもん。
食品会社にとって
その影響力は大きい筈だ。
人気料理研究家がテレビで勧めたり
紹介したりすれば瞬く間に
売り上げに影響出ると思うもん。
坂下さんは尚も続ける。
「ええ、何ら困らないと思います。
ただ、うちの母が
あの店を気に入りましてね。
つい先日、連れていったんですよね。
飯を食いに。そしたらえらく
気に入っちゃって。
店の雰囲気もそしてあの素朴な味も。
うちの母の料理に通ずるものが
あるらしくてね。
あっ、でも社長に言わせると素人が
細々とやっている
貧乏くさいお店なんでしたっけ?」
「な、何が言いたいのだね。」
「いやぁ、なにも。
ただ、いいお店だなぁと
だけど、無くなるかもしれない
なんて聞いたものですから
母が珍しく駄々をこねましてね。」
「だから、何なんだ。
遠回しに言わず、ハッキリ言いたまえ。」
かなり焦ってきてる……。
こうなるともう、
坂下さんのペースにはまるしかない。
「じゃあ、遠慮なく。
母がね、あの店を買い取るって
言い出したんですよ。」
「な、なにをバカな事を。
あそこはうちの会社が既に
開発計画を進めているじゃないか。」
「ええ、聞きましたよ。
だから母は直ぐに
父に言ったんですよね。
あの店を残してって。」
「話が全く見えんのだが。」
「いやぁ、お恥ずかしい話ですが
いい歳をしてうちの両親は
ほんっと、仲が良いんですよ。
父は母の頼みなら何でも聞いてやります。
だから今回、母が言った我が儘も
父は直ぐに叶えてやるとーーーって
言ってましたっけ?」
「な、なにをだ?」
「まだですよね?
うちの父、会社をやっているんですよ。
大した会社じゃないですけどね。
そこそこ名前は知れていると
思いますが……ご存知ないですか?
SAKAコーポレーションっていう
まぁ、何でも屋みたいな会社ですよ。」
テレビでもとても有名な
料理研究家の坂下 やよいさんだった。
一般的な家庭料理にプロの技を
ほんの少し加えることで劇的に
お洒落で美味しいメニューに変えたりと
その気さくなキャラもあって
今、女性達に注目の料理研究家なのだ。
ついこの前も独り暮らしの
女性向けに出版された
『チャチャッとランチで
幸せゲット!』という
料理本がめちゃくちゃ売れてるって
テレビで紹介されてたっけ?
そんな私も一冊持ってるけど……。
だからこの前、店で坂下さんから
この事実を聞いたとき
店中に響き渡る声で叫んだんだ。
本当に驚いたもん。
あんな有名な人がお母さんだなんて……。
そして今、もう一人ここに
叫んでいる人が……
「マジかぁ~っ!」
サトルさんも知らなかったと言う……。
それこそマジか?
「お前、今まで一言もそんなこと
聞いてねえぞ。」
「はい、言ってませんから。」
「普通、言うだろが?」
「俺は普通じゃないのサトルさんも
知ってるじゃないですか。」
無理もないよ。
私だって本当に驚いたもんね。
だけど、確かに言われてみれば
坂下さんてお母さんにそっくりなんだよね。
坂下やよいさんってほんと、美人だもん。
「そ、そ、それにしても
別に君のお母さんが坂下やよいさんで
あっても私は何ら困ることはないのだが。」
と、吉澤社長。
うそ。
明らかに動揺してるじゃない。
だって人気料理研究家だもん。
食品会社にとって
その影響力は大きい筈だ。
人気料理研究家がテレビで勧めたり
紹介したりすれば瞬く間に
売り上げに影響出ると思うもん。
坂下さんは尚も続ける。
「ええ、何ら困らないと思います。
ただ、うちの母が
あの店を気に入りましてね。
つい先日、連れていったんですよね。
飯を食いに。そしたらえらく
気に入っちゃって。
店の雰囲気もそしてあの素朴な味も。
うちの母の料理に通ずるものが
あるらしくてね。
あっ、でも社長に言わせると素人が
細々とやっている
貧乏くさいお店なんでしたっけ?」
「な、何が言いたいのだね。」
「いやぁ、なにも。
ただ、いいお店だなぁと
だけど、無くなるかもしれない
なんて聞いたものですから
母が珍しく駄々をこねましてね。」
「だから、何なんだ。
遠回しに言わず、ハッキリ言いたまえ。」
かなり焦ってきてる……。
こうなるともう、
坂下さんのペースにはまるしかない。
「じゃあ、遠慮なく。
母がね、あの店を買い取るって
言い出したんですよ。」
「な、なにをバカな事を。
あそこはうちの会社が既に
開発計画を進めているじゃないか。」
「ええ、聞きましたよ。
だから母は直ぐに
父に言ったんですよね。
あの店を残してって。」
「話が全く見えんのだが。」
「いやぁ、お恥ずかしい話ですが
いい歳をしてうちの両親は
ほんっと、仲が良いんですよ。
父は母の頼みなら何でも聞いてやります。
だから今回、母が言った我が儘も
父は直ぐに叶えてやるとーーーって
言ってましたっけ?」
「な、なにをだ?」
「まだですよね?
うちの父、会社をやっているんですよ。
大した会社じゃないですけどね。
そこそこ名前は知れていると
思いますが……ご存知ないですか?
SAKAコーポレーションっていう
まぁ、何でも屋みたいな会社ですよ。」



