甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

「ほらね。
もうそろそろ飛び出して来る頃だと
思いました。
少し遅いくらいだったかな?」


と、余裕有りげに言う坂下さん。


「はぁ?坂下ぁ?
お前、こんなとこで何してんの?
うわっ、それになんでこいつまで
いるんだよっ。」


坂下さんの後ろからひょこっと
顔を出すとサトルさんに
凄い顔で睨み付けられた。


ひ、ひぇ~、怖いんですけど……。


「サトルさん、まぁ落ち着いてください。
ちょっと用があって叔父の経営する
このホテルに来たんですよ。
そしたらたまたまこの部屋の前通ったら
聞いたことのある
品のない怒鳴り声がしたもんだから……
まさかと思えば、
やはりサトルさんでしたか?」


「坂下ぁ~、誰が品のないやつなんだよ。
お前言いたいこと言いやがって。
それになんでこいつ連れてホテルになんか
来てるんだよっ!」


すると坂下さんはサトルさんの
耳元に近づくと
小声でみんなには聞こえないようにーーー


「男と女がホテルに来て
することと言えば
決まってるじゃないですか。」


「!!!」


さ、坂下さん
な、なに言ってるのぉ~
そんな筈ないじゃないですかぁ~


「はぁ?なんだとぉ?」


サトルさんが坂下さんに詰め寄る。
けれど、坂下さんは慌てることもなく
落ち着いた声で


「サトルさん、すいません。
それより今は中にいる方と話したいんです。
そこ、開けてもらえますか?」


と言うと私の手を取り
スッとサトルさんを避けて
奥へと進んでいった。


「ちょ、待てよ。
お前、なにする気だよ。」


サトルさんが言うのも無視して
あの大きなテーブルへと来ると
一世に視線が私たちに集まった。


一瞬、私の手を握る
坂下さんの手に力が入ったのが
分かった。


「胡桃ちゃん、ここに座らせて貰う?」


そう言うとこれまた
立派な椅子をスッと引き
肩をトンと押されたかと思えば
ストンっと私は椅子に座っていた。


ひゃぁ~。
両サイドからの視線が痛い……。


私が一人あたふたしている間に
坂下さんも隣に腰を下ろすと
ホテルのスタッフに


「君たち、もう下がっていいよ。」


と、言った。
そしてスタッフが戸惑いながらも
部屋から出ていくのを見届けると


「折角なんで自己紹介でも
させてもらいます。」


と、余裕の笑顔で言った。


さ、坂下さん……
周りの方たちの視線が……
すこぶる怖いんですけど……。


そしてサトルさんの方を見てみると
さっきの出入り口の扉の所にもたれ
腕を組んでじっとこっちを見ていた……
って言うより睨んでます……よね?