甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

坂下さんが無理を言って借りてきた
マスターキーをドアにそっと
差し込む。


うぅ~
緊張するっ。


てゆーか、
どんな無理を言ってマスターキー
借りてきたんだろ……。


兎に角、音を立てないよう
そぉーっと静かに
ドアをほんの少し開いてみる。


するとちょっとした
エントランス的なスペースがあり
その向こう側に
もう1つ扉があった。
坂下さんを見ると1つ首を縦に
頷いたので私も頷き返した。


ここまできたらどこまでも
進むしかないのだ。


坂下さんがその扉をさっきよりも
さらに注意深くほんの少しだけ開けると
思ったより広いスペースがあって
まるで最後の晩餐とでも
言うような大きなテーブルがドンっと
置いてあるのが僅かな隙間から見えた。


そして私も注意深く
中を覗き込むと
その大きなテーブルの両サイドに
サトルさんのご両親とサトルさん
反対側には婚約者一家が並び
両家が向かい合わせに座っていた。


丁度、ホテルのスタッフが
お料理を出す準備をしている。
どうやらセッティングに気を使っていて
私たちの侵入には誰も
気づいていないようだった。


最後にスタッフがシャンパンを
用意しようとした時、
その人は片手でそれを制しーーー


「食事しながらでも良いのですが
大体の日取りだけでも酒が入る前に
決めておきますか?」


と、婚約者、吉澤亮子さんの
お父さんらしき人が言った。


「そうですなぁ。
日取りだけでも決めますかーー」


とサトルさんのお父さんが言いかけた時


「この話、断る。」


今度はサトルさんが言った。