甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

「ふうん。
そりゃ、酷い話だね。
っで、その婚約者ーーー名前なんだっけ?」


「確かーーー吉澤亮子さんです。
黒髪のとても綺麗な人です。」


取り敢えず、サトルさんの婚約者が
ユズさんのお店を潰そうとしている
事だけ坂下さんに話した。
私が婚約者の名前を告げるとーーー


「力になれない事もない。」


と坂下さん。
ん?


「ど、どういう事ですか?」


私が慌てて聞き返すと


「ごめん、ちょっと電話してきても
いいかな?」


そう言ってお店の外へと行ってしまった。


私は訳が分からずカウンターで
ぼんやりしていると
カウンターの中にいたお店の男の人が
気を使って当たり障りない事を
話しかけてきてくれた。


「お待たせ。
変な男に声掛けられなかった?」


と言いながらも目線は
カウンター内にいる男の人に
向けられていた。


「可愛いお嬢さんを一人にしていく
お前が悪いんだろ。ねっ?」


と、
その男の人は坂下さんに言うと
私にウインクしてから奥へと行った。


「ったく、油断も隙もねぇな。
ほんっと俺のダチはどいつもこいつも
信用ならねぇよ。」


「お友達なんですか?」


「そっ、ここは俺の昔っからのダチの店。
雰囲気も良いし落ち着いて話せるからね。
それでここにしたんだけど
間違いだったかな……。」


「クスクス……」


「何?俺、何か変な事言った?」


「坂下さん、さっきから俺って
言ってる……会社じゃ僕なのに
クスクスッ……。」


「えっ、マジで?
ったく、参ったなぁ……。
ダチの店に来るとダメだね。
つい素の部分がでちゃうよ。」


「素……ですか?」


「そうだよ。
普段はずっと俺。
会社だけだよ、僕とか言ってるのは。
王子様キャラは作ってるんだよ。」


「そうなんですか?
でも、どうして?
俺でも全然良いじゃないですか?」


「それがそうでもないんだよね。
王子様キャラの方が
何かと潤滑に事が回るんだ。
素の俺を出すとどうもトラブルに
なりやすいんだよね。
結構、強引な所があるからさ。」


あっ……
確かに前に坂下さんと
ご飯食べた帰り……






ーーー俺の女になれよ





って……
うひゃー
変な事、思い出してしまった。


「大丈夫?胡桃ちゃん。」


「あっ、はい。
すいません、意外だったもので……。」


「意外……かなぁ?
だって前にも胡桃ちゃんには
言ったよね?
俺の女にーーーー」


と、近づいてくる坂下さんに


「坂下さんっ!
っで、力になれるとか、なれないとか……」


「あっ、そうそう
まずはそっちが先か。
後でゆっくりとね。」


いや、その笑顔意味深ですから。


「そ、それで続きを。」


「うーん、ちょっと気になって
今、その婚約者の親が経営している
企業名を確認してきたんだ。」


「確認……ですか?」


「そっ。実はうちの親もちょっとした
会社をしていてね。実はーーー」