サトルさんが言うにはこうだった。
お父さんが思わぬ交通事故で
怪我をして、それで和菓子職人になることを
決意したサトルさん。
その頃、同じデザイン部にいた坂下さんに
自分の後を引き継がせようと思ったらしく
直属の上司にその事をお願いしたらしい。
まぁ、それだけの事だったら
特にどうってことない話なんだけど……。
「あいつさぁ、素直じゃねぇだろ?
俺がデザインの道、諦めて
会社やめることを気にしてさぁ。
丁度、俺がその時に担当していた
プロジェクトの後を引き受けないとか
言い出しやがった。」
「えっ、そ、それで?」
「それでだ。
俺と坂下とで
ボールペンのニューモデルのデザインを
それぞれ出して上司に
選んで貰うことにしたんだ。
坂下のデザイン案が通った場合は
坂下が引き継ぐ。
そうでない場合は他のやつに任せる。」
「なるほどぉ。
それでどうだったんですか?」
「ああ……。」
と、
急に歯切れの悪い返事をするサトルさん。
「出したんですよね?デザイン案。」
「ああ……、出さなかったんだ。」
「えっ?それって……。」
「坂下は出さなかった。」
「そうなんですか?」
「そして……俺も勝負から逃げた。」
お父さんが思わぬ交通事故で
怪我をして、それで和菓子職人になることを
決意したサトルさん。
その頃、同じデザイン部にいた坂下さんに
自分の後を引き継がせようと思ったらしく
直属の上司にその事をお願いしたらしい。
まぁ、それだけの事だったら
特にどうってことない話なんだけど……。
「あいつさぁ、素直じゃねぇだろ?
俺がデザインの道、諦めて
会社やめることを気にしてさぁ。
丁度、俺がその時に担当していた
プロジェクトの後を引き受けないとか
言い出しやがった。」
「えっ、そ、それで?」
「それでだ。
俺と坂下とで
ボールペンのニューモデルのデザインを
それぞれ出して上司に
選んで貰うことにしたんだ。
坂下のデザイン案が通った場合は
坂下が引き継ぐ。
そうでない場合は他のやつに任せる。」
「なるほどぉ。
それでどうだったんですか?」
「ああ……。」
と、
急に歯切れの悪い返事をするサトルさん。
「出したんですよね?デザイン案。」
「ああ……、出さなかったんだ。」
「えっ?それって……。」
「坂下は出さなかった。」
「そうなんですか?」
「そして……俺も勝負から逃げた。」



