甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

私がドキドキしていることに
全く気付く様子もなく
手際よく作業を進めるサトルさん。


見ているとどうやらパッドから
出されたのは羊羮のようだった。


「羊羮?」


「いや、ちょっと違うな。」


そう言いながらも手を
止めることはなく
包丁をすーっと入れて
丁度いい大きさに
切り揃えていく。


そして、


「これが大事。」


そう言うとその黒い羊羮の様な物に
何やら振り掛けた。


「うわぁ~、金粉ですか?」


黒く光輝く菓子の上に
金粉が上品に散りばめられた。


「これでよしっと。名付けて銀河。
どうだ?光輝く夜空のようだろ?」


「はいっ、とっても綺麗です。」


「食うか?」


「はい!もちろんっ。」


サトルさんは満足げに笑うと
真っ白な飾り気のない
小皿を一枚棚から取り出し、
その上に今、出来たばかりの
和菓子、銀河を乗せて私に渡してくれた。


添えられた和菓子用の楊枝を手に取り
スーっと切り込みを入れてみる。


確かに羊羮ほど固くはないんだけど
けれどそれなりの弾力があって
んーーーーー……


「これ、寒天ですか?」


「おっ、さすが日頃から
菓子ばっか食ってるだけあるな。」


菓子ばっかって……
確かにそうだけど……。


「寒天で正解。
それもただの寒天じゃない。
業者に別注で作らせて
通常より弾力性を強くしてもらっている。」


「だからかぁ。
寒天にしては随分としっかりしてますよね。」


「まぁ、兎に角、一口食ってみな。」


「はい。」


一口サイズに切ったものを
口に入れると……。


うひゃぁ~。


口の中に濃厚な黒蜜の味が広がった。
けれど寒天の淡白さが、
上手く調和せていて
その甘さはしつこくない。


寧ろ、もう一口と
食べたくなるような味だ。


「めちゃくちゃ、美味しいっ。」


「だろ?溶かした寒天に沖縄産特等黒糖を
使って作った黒蜜を混ぜて固めてある。
黒色の艶が違うだろ?
俺のこだわりだ。
っで、その深い黒を夜空に見立てて
星の金粉を散りばめてみたって訳だ。」


「サトルさんのオリジナルですかぁ。」


目の前にある出来立ての
銀河を再びまじまじと見つめる。


「本当に綺麗だなぁ……。」