「おい、そこ座れよ」


と、近くの川沿いまでくると、乱暴にベンチに投げられた。


「きゃっ。いったぁ~い、何、するんですかっ!」


ベンチにドサッと思いっきり尻もちつく形になった。


「はあ?なにって、疲れただろうって思ったから、そこに座らせてやっただけだろーが。文句言うんじゃねぇよ。」


と言いながらその人もくっつくように隣に座ってきた。


ち、ち、近いって……。


てゆーか、


「はあ?って、それはこっちですよ!大体、なんなんですか?私、ただのお客ですよ?和菓子、買いにいっただけじゃない。なのに抱きしめられて……その……
その……キ、キ、ス…とか」


「なに?キスのこと言ってんの?まあ、あれだ、あれは不可抗力。流れで仕方なくだよ。そんなキスの一つや二つでーー」


気がつくと言葉より手が先に出ていた。


「いってぇなぁ。殴ることねぇだろ?」


「ご、ごめんなさい。だけど、キスの一つや二つなんて……あなたにとってはそうかもしれないけど……私はーー」


「お前、初めてだったの?ただのキスだぞ? キスもしたことねぇの?それも舌もなんも入れてーーー」


「や、止めてくださいっ!その……舌も、とか……言うの。」


そうよ、初めてだよ。私にとってさっきのキスは初めてーーー。だって年齢の22歳=彼氏いない歴の私だもん。


そんな私のファーストキスだよ?もっと、素敵なの想像するじゃん……。


素敵なシチュエーションで二人の想いが通じあって……。


なのに、さっきのといったら!


「マジかよ……。よしっ!じゃぁ、俺が責任とってやる。なっ?こうなりゃ、本当に俺と付き合え、俺がお前の初カレになってやる!」


「はあ?なんなんですか?さっきから勝手な事ばかり言ってるじゃないですか!責任なんて取っていりません。それにあなたの事なんて知りませんから。」


「お前、折角の人の好意にケチつけやがって、大体、ちゃんと、俺見てみろよ。」


「見ろって?」


「ほらっ」


と、ベンチから立ち上がり私の目の前に立つ彼をじっくりと見るとーーーー


うっ、悔しいけれど…


か、か、カッコいい。