甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

「うわぁ~、この練りきり、
まるで芸術作品のようですね。
食べるの勿体ない。
うひゃぁ~、
こっちのきんつばは、アンコが
ひしめき合ってますよ。」


「お前さぁ、
アンコひしめき合うって
どんな表現だよ。
きんつばってのは元は刀の鍔(つば)を
型どってだな丸い形をしているーーーーって
お前、二日酔いで食えねぇって
言ってた割にはよく食うなぁ。」


「そりゃあ、目の前に
これだけ並べられると食べなきゃですよ。」


とある有名ホテルの会場にて、
その催しは行われていた。


今回はあくまでも
同業者同士、
技術の向上をすべく行われたもの、
なので当然一般人は入れないのだ。


会場脇に設置された
特別ブースで各お店の商品を
食べることが出来るようになっていた。


「今回は出してないんですか?
そのーーー
さ、さ、櫻井さんの新作。」


やはり、
本人を前にサトルとは呼べないよ。


「ああ、今回は出さなかった。
納得いくものが出来なかったからな。
中途半端な事はしたくないんだ。」


ふうん、
結構、真面目なんだなって
当たり前かぁ。
何せ老舗の12代目だもんね。
と、私が一人納得しているとーーー


「つーかさ、サトルだろ?
サトルって呼べって言ったろ?」


「いや、呼べないですよ。
そんな、大した付き合いでも
ないのに……。」


「へぇ~。
お前は大した付き合いでもない
俺とこうして和菓子を
食べに来てるって訳かぁ。
ほぉ~、キスまでした中なのに
大した付き合いではーーーー」
「やっ、やめてくださいっ!
こ、声が大きいです。
回りに聞こえるじゃないですか。」


「聞こえたっていいだろ?
本当のことなんだし。
何、今さら格好つけてんだよ。
俺たちはただならぬ仲ですよぉーーーっ。」


「もう、止めてくださいってば。
本当の事だとか、ただならぬとか
嘘を言うのはやめてくださいっ!」


「はあ?誰が嘘だよ。
あん時、キスしただろが?
何ならもう一度するか?
今ここで。
なら、思い出すんじゃねぇの?」


「するわけーーーーー」
「ないよね、村崎さん?」


聞き覚えのある声が
私の声と被った。


ん?


振り返るとーーーー


「坂下さんっ!」


な、なんで
坂下さんがここに?


わかんないんですけどぉ~!