「それで、緊急事態って事で私は呼び出されたって訳?」


もう、自分では手に終えず、若干、迷ったものの全てを香澄に白状した。


香澄は今日、新カレとご飯を食べに行く予定だったらしいけど強引にひき止めた。そして、いつも二人でよく来る会社近くの居酒屋さんにやって来たのだ。


「うん。もう、私ひとりじゃどうしたら良いのかわかんなくて……。」


「あんたって、ほんと鈍いわよねぇ。特に恋愛関係。昔っから全く進歩ないんだから。すいませーん、生中お代わりっ!」





うっ、ヤバい。香澄のペースが上がってきた。もう既に三杯目だよ。やっぱり、居酒屋はまずかったかな?喫茶店とかにすれば良かったかも……。


「っで、坂下さんの事、本当に分かってなかったの?私な訳がないでしょ?あんたのことばっかり見てたもん。はぁ……なんで気づかないかなぁ。おじさぁーん、軟骨唐揚げも頂戴ねぇ。あっ、たこわさも。」


香澄って美人の皮を被ったオヤジ……


いやいや、今の私には神様仏様香澄様!


「ほんと、どうしよぉ。」


「そうねぇ……。どっちとも付き合えばいいじゃない?」


「ど、どっちとも?無理無理無理無理っ!適当な事を言わないでよ。人が真剣に悩んでいるのに。」


「あら、適当な訳じゃないわよ。だってさぁ、和菓子職人の条件も悪くないと思うもん。胡桃、甘いもの好きじゃない。和菓子職人なんて、ピッタリじゃない。それに見た目もめちゃ、良い男だったし。」


と、今さっき、テーブルに置かれた、三杯目のジョッキを勢い良く煽る香澄。


ペースが益々、早い。


ほんの少し据わってきた目で更に話を進める香澄。


「ね?和菓子職人にしたら?」


和菓子職人ねぇ……。


「やっぱり、無理。確かに見た目は格好いいけど、口は悪いし乱暴だし、自己中で強引だし、サイテーだよ。」


「じゃあ、なんで、きっぱりと断んなかったのよ。いくら強引でもちゃんと断れるでしょ?子供じゃないんだからさ。」


うっ、お酒が入っていても的確に痛いところをついてくるなぁ……。


だってさぁ……。


「だって、それはーーー」


和菓子食べ放題って言われて迷っているなんて、さすがに言えないよね……。


「っで、坂下さんの事は実際どうなの?好きとかそういった気持ち全くないの?」


「坂下さんねぇ……。めちゃ、格好いいし、優しいし良いなって思うよ。」


「じゃあ、坂下さんと付き合えば?」


「うぅ~ん……。」


確かに坂下さんみたいな人が彼になったら、めちゃくちゃ
幸せなんだろうなって思うよ。だけど、好きかどうかって聞かれたら、分かんないんだよね。


それに、意外と強引なところもあったりーーー。


「もっと、坂下さんのこと知ってみなきゃ無理だよ。いきなり付き合うなんて。」


「じゃあ、やっぱり両方と付き合いなさい。お試しで。はい、解決!さっじゃんじゃん飲むよ。明日は休みだからね。」


「ええーー、何よそれぇ……。」


はぁ……。仕方ないか。居酒屋に誘ったの私だし。やっぱり、喫茶店で、相談すれば良かったかなぁ。


頼りになるんだけど、お酒が入るとほんっと香澄って






ただのオヤジなんだよね……。