いや、そりゃないって、意味分かんない。


「おい、大丈夫か?そんな項垂れて。お前、チビなんだからシートベルトで首締まらねぇのか?」


締まってますよ。若干、苦しいもん。だけど項垂れますよ、この展開なら誰でも。


「おい、大丈夫か?おい、何とか言えよ。」


「ご、ごめんなさい……。あまりにも予想外の言葉だったので。えっと、もう一回、整理して話して貰えませんか?」


そうだ、ちゃんと聞かなきゃ。これじゃあ、私この人に、ただ、良いように遊ばれてるだけじゃないっ。


「ああ、それもそうだな。俺もこの気持ち、丁度、整理したいと思ってた。いいか?よく聞け?」


「お願いします……。」


「実は俺は和菓子職人になってまだ、二年と少しだ。」


「そうなんですか?その前はなんかされてたんですか?」


「まぁ、聞けって。女が急かすのはナニの時だけでーーーって、何言わせんだよっ。」


「いや、何も言ってないです。」


「そっか。まぁ、兎に角だ。覚えが良くてなんだって上手くやれる俺だけど、それでも和菓子作りを始めだした頃は
上手くいかなかったんだ。それで、やっぱ無理だなって、俺の代でこの店、潰すかって毎日、考えてた。」


「そんな事が……。」


「が、そこに現れたのが、バカみてぇにニヤけた顔してガラスケースの前で俺の作った和菓子達を嬉しそうに見てるやつがいたって訳よ。」


「そのーーーバカ?みたいってのは……。」


「お前しかいねぇだろ?」


なるほど、って、納得してる場合じゃない私!


「それがきっかけで恋に発展したってことですよね?」


って、何気に私、必死なんですけど。


「んーーー、それがさぁ、まだ、ピンとこねぇんだよ。いや、確かにお前の笑顔が俺は好きだ。だからと言って、心も体も全て奪いたいくらい好きかって聞かれたらーーー
わかんねぇんだよなぁ。」


心も、か、体もって……照れる。


いや、待てよ?


「じゃあ、別に私があなたの彼女にならなくてもいいんじゃないんですか?所詮、見合い相手を断る為の口実ってことですよね?誰でも良いじゃない。」


「バカ、もう親に紹介したんだし、顔、バレてるだろ?今更、別の女連れてってみろ、また、大騒ぎだぞ。それに俺は誰でも言い訳じゃない。前々からお前の事が気になってたからお前に頼んでるんだ。婚約者になってくれってさ。」


はぁ…、何か面倒な話になってきた。


「じゃ、どうしろって言うんですかぁ?」


私はもう半ば投げやりになっていた。