「ありがとうございました。結局、ごちそうになってしまって。」


と、助手席に座りながらお礼を言う。


ユズさんのお店は意外にも私のうちから近い場所にあり、一人で帰ると丁重に何度々もお断りしたんだけど、双方譲らずでーーーー


結局、私が折れて、車で送ってもらうことになった。


「気にすんなって、言ったろ?金と女は切らしたことがねぇって。」


アハハ……す、すごい自信ですね。


「てゆーか、お前さ、デザート俺の分まで食って、腹大丈夫なのか?」


ユズさんの所で食べた、春のちらし御膳には、サトルさんが作った和菓子がデザートで出てきた。それも昼間、食べ損ねた桜をモチーフにしたきんとん。


「あっ、はい。和菓子の一個や二個、全然余裕です。それに今日のお昼、食べ損ねちゃったので…はぁーーーっ!」


「なんだよ、でけぇ声、急に出すなよ。運転、ミスるだろ?」


「いや、だって、そもそもなんでこんなまったりと二人でご飯、食べてんですかっ!しかも初対面でっ!」


「えっ、いいんじゃねぇの?初対面って、昼間会ったじゃん。おまけにキスした仲だろ?」


「ちょ、ちょっと、あれは事故ですよ!事故っ!カウントしないでくださいっ。あんなファーストキス、悲しすぎます。」


「悲しいって……、てゆーかさ、ウマかったろ?」


「えっ?キ、キ、キスですか?」


「お前さ……どんな思考回路してんのよ。飯だろ?めぇし。」


「あっ、そっちの旨いか……。」


うん……まぁ、確かに美味しかったけど。


「お前って、ほんっと、バカなんだな……クックックッ」


「な、なんなんですか、人をバカ呼ばわりして。って、そもそも話あるんじゃなかったんですかっ!!」


「んーーーー、話ねぇ……。」


なんとも歯切れの悪い返事に、妙な胸騒ぎを覚えながらも、運転中にさすがに車から飛び降りる訳にもいかないし……。


するとーーー


「お前さ、マジで男いねぇの?」


「えっ?い、いませんけど。」


「そっか、なら問題ねぇよな?」


「問題って?」


私が聞き返すと、まだ家についてないと言うのに、車はスーーっと路肩へと止められた。


な、なに?なんなの?変な事、されちゃう?