「えっ……これって…。」


「鍵。見りゃわかるだろが。」


いや、見りゃ分かりますよ、そりゃ。


「一体、何の?」


私が状況を飲み込めず聞き返すと


「お前さぁ、この状況で
倉庫行って上新粉の袋一つ
持ってこいって言うとでも思うか?」


いや、さすがに私もそれはないけど…
だって……。


「サトルさんって
ここに住んでないんですか?」


「ああ、他に部屋借りてる。
と言っても仕事が詰まってる時は
本宅か離で寝泊まりするけど
基本はそっちだな。」


そうなんだ…。
てっきり、ここに住んでいるんだと
思い込んでた。


「それにーーー」


「それに?」


「こっちだと、親父達がいるから
落ち着いてデキねぇだろ?」


落ち着いて……デキねぇ?


「ああ、和菓子作りですか?」








「お前、それマジ?」


「えっ…何か、違いましたか?」


「大いに違う。
はぁ…、言っとくけど
俺が女に自分の部屋の鍵渡すの
初めてだからな。
ありがたく思え。」


「へ、部屋の鍵…ですか!」


「そっ、俺の部屋の鍵。
お前んちの安マンションと違って
俺の部屋は防音がしっかりしてる。
何をしても大丈夫だ。」


な、な、何をって……
って言うか、何気に人のマンションのこと
貶してますよね。


「兎に角だ、二人きりになれる時間が
もっと欲しいんだ。
お前との時間が……」


また、そっと唇は重なった。