ダメ…。
こんなところで…。
トキさんだって直ぐそこにいるのに…。


「坊っちゃん、私、
ちょっと用がありますので
お店番お願いしますね。」


サトルさんが返事をする前に
トキさんはどうやら店を
出ていったみたい…って
今、カチャっカチャて鍵かかる音した?


「フッ…トキさん、気ぃ使いやがって。
せっかくの好意を無駄にしちゃぁ悪いな。」


そう言うと、
一度、離れた唇がまた重なってくる。


深く…深く…
息も出来ないくらいの激しいキス。


頭の芯が痺れる様な感じがして
全身の力が抜けそうになる…。


実は、あの時から
サトルさんが忙しくて
デートどころかゆっくりと、
会う時間すらもない。


秋に開催される
和菓子コンクールに出す
新作の準備に
おまけに雑誌で
イケメン和菓子職人なんて
紹介されたから更に取材とか
まとまった注文とか増えちゃって…。


だからーーー


こうして唇を重ねるのも
久しぶり………







モソッ……



モソモソ……
痺れるようなキスの途中
サトルさんの手が
スカートの中へと入ってきて…



「ちょ、ちょっと
止めてください!」


「チッ、何だよ。
折角、これからって時に。」


「これからって、何ですか、
これからって!
私だってこれからまだ仕事が
あるんです。」


「へぇ…じゃぁ、仕事がなけりゃ
止めなくていいんだな?」


「えっ…。」


そう言うと、
ポケットから何やら取り出して


「手、出せ。」


と、サトルさん。


言われたまま手を出すとーーー


チャリン…


小さな桜の花びらを型どった
キーホルダーが着いた
鍵を渡された。