甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

あの日から……
あの、
初めて思いが通じ合った時から





あっという間に日々は過ぎていき……





気づけば8月ーーー








  
 


うぅ〜〜
無難にきんつばにしようかなぁ…
いや、
やっぱり、色鮮やかな
朝顔の練切りも良いし…
だけど
今の時期は黒蜜たっぷりの
このワラビ餅も捨てがたい…


「決められないぃ〜。」


「ほんっと、胡桃は
気が多いんだから。
どうせ、毎日通ってるんだから
端から順に食べりゃいいじゃないのよ。
早く決めないと昼休憩終わるよ。」


「香澄ぃ〜、待ってよぉ。
端から順にって言うけど
じゃあ、どっちの端から食べれば
良いのよぉ〜。右だと常用饅頭だし
左だと……」


「胡桃さん、この浮橋はどうでしょ?」


トキさんが見かねて助け舟を
出してくれる。


「浮橋…?
ああっ、つい最近、出来た新作ですよね。」


「ええ、丁度、今日から
店頭に出しているんですよ。」


そう、新作の浮橋は
何でも、サトルさんが
中々、意地を張って素直になれなかった
トキさんとユズさんが
漸く、会えたのを記念に
作った和菓子で


源氏物語に出てくる
浮橋から名前を取ったそうだ。


それはメレンゲをベースに
下半分は抹茶
上半分は小豆で
作ってあり、食感としては
お饅頭と言うよりはどちらかと言えば
その見た目もカステラの様だ。


実はこの前
完成間近のものを
一度、試食させて貰ったんだ。


途中段階でもかなり
美味しかったんだよねぇ。
メレンゲ具合がフワフワで…


「おう、来てたのか?」


「サトルさんっ!」


店の奥にある暖簾からサトルさんが
顔を出した。


トキさんが浮橋を包んでいるのを見て


「この前の段階より
数段、フワフワ度が増してるからな。」


と、嬉しそうに言う。


「ふぅ〜ん、じゃあ、俺も
その浮橋くださぁーい。」


「げっ、な、なんで
坂下、お前まで一緒にいるんだよっ!」


そう、つい最近、
またデザイン部に戻った坂下さん。


トキさんとユズさんを見て
意地を張って投げ出したデザインの道に
もう一度、戻ろうと思ったみたい。


かなり、色々な条件をクリアして
やっとの事で戻れたみたい。


確かに、何をやっても器用にこなす
坂下さんだけど
デザイン部に戻ってからの坂下さんは
一段と輝いて見えるもん。


そういった事もあり
外回りの営業と違って
内勤だから、こうして
香澄、私の三人で一緒に
ランチすることも……。


「サトルさん
男の嫉妬は見苦しいですよ。
別に二人でランチって訳じゃ
ないんだし、
そんな目くじら立てなくても…。
胡桃ちゃんに嫌われますよ。
春川さんもそう思うよね?」