甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*

そうだよ。話を聞かなきゃ、昼間といい今といい、全く何がなんだか分かんないじゃん。


「お、おう。それそれ、取敢えず、謝るわ。このとおり、悪かった。」


へっ?謝る?なんかーーー


拍子抜けなんですけど。


「いえ、謝っていただけるなら、もういいです。こっちも手を出したし……。」


「ああ、あれ結構痛かったなぁ。いきなりでさすがの俺もよけれねぇよ。」


「ス、スイマセン。にしても、謝るだけでこんなことしていただかなくても……。」


「いや、謝るだけじゃない。本題はこれからだ。」


「本題?」


「そっ、本題。」


「本題、ですか?」


「彼女、いや、婚約者になってくれ。このとおり!」


目の前で頭を下げるサトルさん。


「はっ?」


な、なんで?確かに昼間、彼女がどうだとかなんだとか……。


いや、でも、初対面だよ、初対面だよね?


それがなんで、いきなり彼女なのよ。おまけに婚約者だなんて。


こっちは散々な目にあわさてるのにぃ。


「あの、意味わかんないんですけど……。」


「ったく、あったまわりぃなぁ……」


「えっ?あたま悪い?」


「いや、違う。そのぉ、なんだ。お前も大体は分かってると思うがーーー」


「何も分かりませんよ。」


「いや、だからただの前置きだ。こういうときは、わかってなくても黙って話、聞けって。」


「あっ、はい。」


なんか、強引だよね。兎に角、話は聞かなきゃ。


「あの店は江戸時代から続く老舗だ。代々、技を受け継いできたんだ。ちなみに俺で12代目だ。」


「そんなに…すごいですね。」


「だろ?で、だ。こうして何事もなく一つの仕事を代々継いでゆくってのは結構、難しくてだな。俺の事を今一つ信用してねぇ親父が嫁さんを取れと言い出した。」


「お嫁さんですか。うん、納得。」


内助の功ってやつ?


「いや、ここは納得するなよ。言っとくけど、親父は俺の和菓子職人としての腕は認めてる。ただーーー」


「日頃の行いですよね?」


「そうそう、日頃のーーーって、お前、調子のるんじゃねぇよ。」


「す、すいません。つい本心が……。」


「何が本心だよ。ったく。っでまぁ、見合いをしたわけだ。騙されて。」


「騙されて?」


「ああ、騙されてな。和菓子協会の会合がホテルであるって言うから行ってみりゃ着物着た女が座ってるわけよ。」


「お見合いの相手?」


「そっ、そしたら、どっからともなく、うちの親父とお袋、相手の親も出てきて話をどんどん進めやがる。親父なんて風邪で具合悪いから、代わりに会合に行ってくれぇって蚊の泣くような声で言ってたくせにさ。」


「クスクス……。」


「笑い事じゃねぇよ。つーか、お前、やっと笑ったな。」


「えっ。」


そ、そんなこと急に言われても…どんな顔したら良いのか分からなくなる。


それに、なんで、そんな優しい顔して言うのよ。意地悪ばっかりいってた癖に……。