「俺、サイテーだろ?」


と、少しの沈黙の後
私の顔を見て力なく坂下さんが言う。


「いいえ……そんな風には思いません。
こうして今、ちゃんと正直に
話してくださってるじゃないですか?
それって坂下さんが誠実だからですよね。
それに今回の件だって……
坂下さんがいなければどうなっていたか。」


「誠実なんかじゃないよ。
そりゃ、もちろん
ユズさんのお店の為ってのもある。
だけど、好きな子が困ってるってのに
放っておけないよ。
それにーーー」


「それに?」


「もしかしたら
これをきっかけに胡桃ちゃんが
俺の事、ちゃんと
見てくれるんじゃないかなって
下心ありありだよ。」


下心って……。


「正直、最初は直ぐに
手に入るって思ってた。
胡桃ちゃんのことも。
大抵の女の子達は俺の手に掛かれば
簡単に堕ちるからね。
胡桃ちゃんもそうだと思ってたんだ。」


「お、堕ちる……。」


「そっ、簡単にね。
だけど、君は、君だけは
そうはいかなかった。
流されそうで結構、頑固なんだよね。
まぁ、それで俺も益々ムキになって……
俺を見てほしくて
俺だけに笑顔を向けてほしくて……。
気づけば俺のここは胡桃ちゃんで
いっぱいだよ。」


と、自分の胸を指す坂下さん。
そんな風に思ってくれてたんだ……。


「恥ずかしい話だけど
今までこんな思いしたことないんだ。
一度も。
いかにまともな恋愛してこなかったかって事。
俺、今回、初めて恋したんだろうな。
そして、失恋も……か?」


「坂下さん……、ごめんなさい。」


「いや、謝んないでよ。
失恋ったって、サトルさん次第で
俺にもまだチャンスはあるからね。」


と、明るくウインクをして見せる。
うっ、この顔を見れば
確かにみんな堕ちると言うのが
よく分かる。


にしてもーーー


「どう考えても
サトルさんが私に執着してるとか
思えないんですけど……。」