「ふーん……。今日はハロウィンなのに、キミ、案外つまらない人なんだねぇ。ボク、ガッカリしちゃった」

 勝手に期待されて勝手にガッカリされても困るのだが……。
 どっちもいらないから「どっちもいらない」と答えた。これに嘘偽りはないから、自分の中では良しとしよう。

「でも、キミは正直者なんだね!ウソをつかない人、ボクは好きだよ!」

 はぁ……。
 初対面の彼に好かれても複雑な心情なのだが、人に好かれても嫌な気持ちにはならないので別に構わないか。
 私はお礼の言葉を口にした。

「あ。もうこんな時間」

 携帯を開き、時間を確認したキミは、くるりと私に背を向けた。

「あまり帰りが遅いと、心配する人がいるんだよねぇ。ってなわけで、そろそろ帰るねー。んじゃぱー★」

 彼は一瞬のうちに、私の目の前からどこかへと消えていった。
 結局、彼はいったいなんだったんだろう……。
 死神だと名乗っていたにも関わらず、殺されなかったのは不幸中の幸いだったかもしれない。
 私は今を生きている喜びを噛み締めながら、再び前へと歩きだした。