「だとしても、本音だし」
俯いていた顔を上げて、恭ちゃんを見る。
恭ちゃんは最初少し驚いていたけど、私が真面目な顔をしていたからか、いつの間にか真剣な顔に変わっていた。
「だって、好きだとかバカみたいじゃない。
最初から存在しない恭ちゃんをずっと好きだったなんて……。
全部嘘だったのに、それにも気付かないで……恭ちゃんの何を見てたんだろうって情けなくなる」
少しの間、見つめ合ったままの時間が過ぎて。
それから恭ちゃんは困り顔で微笑んだ。
「校内では手を出すなって言ったのはおまえだろ。煽るな」
「煽ってないでしょ。これで変なスイッチが入るなら、ちょっとそれ緩すぎだよ。
曲がりなりにも保健医なんだからちゃんときつく調節しといて」
「してるから今手出さなかったんだろ」
明るいトーンで話す恭ちゃんの声を聞いて、さっきまでの会話が終わったんだと判断する。
この間はベッドに押し倒されながらの話で、きちんと冷静に聞けなかったから、今度こそ聞きたかったのに。
でも、この話が恭ちゃんにとってしたくない話のような気もして、誤魔化されたのは分かったけど、それ以上聞けなかった。
知りたいし分かりたいけど、それを恭ちゃんが望まないなら、無理やり聞き出そうとは思わない。
本心を言えば、話して欲しいけど。



