甘い愛で縛りつけて



職員室に行くって言えば、そのついでにって他の職員は色々な用事を頼んだりする。
書類を渡して欲しいとか、貸したモノを返してもらってきて欲しいとか。

昼休みに購買に行くなんて言えば、あれもこれもって頼まれてメモがないと覚えられないほどの時だってある。
田口さんに至っては、「河合さんと同じモノを」とか気持ち悪い注文までしてくるっていうのに、事務長はそんな時でも「私は大丈夫」の一点張り。

仕事とは関係ないし、当たり前って言えば当たり前なのかもしれないけれど。
他の職員と比べてあまりに何もお願いされないから、それは少し寂しかったりしたのも事実だった。

事務長を尊敬している分、何でもしたいって思っていたから。

だから、こうしてお使いを頼まれたのは素直に嬉しくもあったけど、なんでだろうって疑問も残った。

「恭ちゃん、事務長と職場が一緒だった時、仕事以外で何か頼まれたりした?」

引き出しから取り出した鍵を鍵穴に差し込んだ恭ちゃんは、ガタガタとすべりの悪い引き戸を開けながらこちらに視線を移す。

「仕事以外はなかったと思うけど。なんだよ、急に」
「ううん。私に頭痛薬頼むとか、珍しいなって思っただけ」

こう思うのは私の気のせいなんだろうけど……。
なんだか事務長は、私と恭ちゃんが一緒にいる時間を増やそうとしている気がする。