甘い愛で縛りつけて



「158.7。うわ、おまえ160もないのか」

昔ながらの身長計の計りを人の頭の上に勢いよくぶつけた挙句、顔をしかめる恭ちゃんを睨みつける。
今のぶつかり方は、数ミリ縮んでもおかしくなかった。

「そのうちこぶができて腫れあがるから、五分後に計ったら多分伸びてると思う」
「じゃあ後2、3発やってやるよ。そうすれば160いくだろ」
「別にこの身長で困った事ないからこのままで問題ないし」
「サバ読まずにちゃんと事務長に言えよ」
「分かってるよ。それより薬」

机の引き出しを開けて、薬品棚の鍵を探す恭ちゃんを壁に寄りかかりながら眺める。

なんだかさっきの事務長は少しおかしかった気がする。
いつもお世話になっているし、私が手伝える事なら何でもしたいって思ってるくらいだから、頭痛薬を頼まれるくらい何でもない。
むしろ頼られて嬉しいくらい。

でも、私が見る限り、事務長はこの一年間、そういう私事の用事を誰かに任せたりした事はなかった。