去年まではメモリを目視で確認するアナログタイプだったのに、今年から最新式のデジタル表示になんかするから。
故障しちゃっても誰も直せなくて、でも、去年まで使っていたモノもすぐ出せないとかで保留になったままだった身長。
とりあえず身長だけ空欄で事務長に出したんだっけ。
「まぁ、去年の数字をそのまま使ってもいいんだが、せっかくだから計ってきなさい。
河合さんくらいの歳なら、まだ伸びている可能性もある。
大丈夫。遅刻扱いにはしないから」
「でも私、高校の頃から変わらないので、去年の数字でも大丈夫……」
「それとついでに、頭痛薬ももらってきて欲しいんだ」
例え10センチ伸びていたとしても、業務に関係するとも思えない。
今からわざわざ計り直す必要も感じられなくてやんわりと断ろうとした私を、事務長は少しバツが悪そうに笑いながら止めた。
「体調が悪いんですか?」
心配になって聞くと、事務長は「いやいや」と微笑みながら首を振る。
「昨日の夜、懐かしい映画がやっていたからつい夢中になってしまってね。
興奮してなかなか寝付けないでいたら、今朝は寝不足のせいか少し頭痛があるんだ。
昔から寝不足だとすぐに頭痛が起こるんだ。困った癖だよ。
私事を仕事に持ち込んでしまって申し訳ないんだが頼まれてくれるかい?」
「あ、はい……。そういう事でしたら」
笑顔で頷くと、事務長も同じように笑った後、「じゃあ頼んだよ、朝宮くん」と恭ちゃんに視線を移した。



