甘い愛で縛りつけて



「だから、恭ちゃんももっとちゃんと自分を見せて。人には信じろって言うくせに、自分は本心隠したままなんてズルいよ。
ちゃんと……見せてよ」

じっと見つめ合ったままの時間が流れる。
恭ちゃんの目は、少し驚いたような表情を見せた後、柔らかく細められた。

そして、「分かった」と小さな返事が聞こえてきて。

恭ちゃんの柔らかい表情にほっとして、私も同じように微笑んでからハっとする。
今日は、いつもより一本遅い電車になっちゃったから、学校まで急がないと遅刻だ。
そんな事を電車の中で考えていたハズなのに、恭ちゃんに会ってすっかり忘れていた。

バっと腕時計を見ると、時計は8時7分を指していた。
定刻まであと13分。

走ってギリギリだ。

「恭ちゃん! 時間! 急がないと遅刻だよっ」
「あー、そうかもな」
「のんびりしてないで! 本当に急いでってば!」

それでも歩こうとする恭ちゃんの腕を掴んで走り出すと、恭ちゃんが、仕方ねぇなって感じに笑ってから走り出した。