甘い愛で縛りつけて



『他の人は知らないけど……私は、今の、本当の恭ちゃんがいい』
昨日、そう言ったくせに。

他の誰が昔の恭ちゃんを望んでも、私だけは違うから。
昨日、そう思ったくせに。

見上げると、恭ちゃんのぼんやりした瞳と目が合う。
希望をなくしたような、感情を殺したような、そんな瞳と。

今、恭ちゃんにこんな顔させてるのは、私だ。
過去の自分にしか価値がないって今の自分を卑下している恭ちゃんを知っていたくせに、その気持ちに追い打ちをかけるような態度をとってしまったんだから。

――そんな顔しないで。
昨日、強くそう思ったくせに……私、なにやってるんだろう。


「私は、恭ちゃんを信じる」
「は?」
「信じるっていうか……これから、だんだん今の恭ちゃんを知って信じてく」

恥ずかしい気持ちを隠すために、顔がしかめっつらになる。
恭ちゃんも同じように顔をしかめてこっちを見つめてくるから、目を伏せながら続けた。

「だって、好きだとか……そんなの、すぐに信じろってほうが無理だよ。
だから、少しだけ時間が欲しい。
本当の恭ちゃんを知っていく時間」

立ち止まると、数歩歩いた先で恭ちゃんも止まって私を振り返る。
恥ずかしい気持ちもあったけど、恭ちゃんを見つめて言った。