その理由は分からないけど……。
常に、なんて、どう考えたっておかしく思えた。
自分本来の姿じゃない人格を演じてきた間、恭ちゃんは何を思ってきたんだろう。
あんなに好きで、毎日一緒にいた私にさえ本当の自分を気付かせなかった恭ちゃんは……苦しくなかったのかな。
隠してきた本当の自分を、恭ちゃんはどう感じてたんだろう。
……それとも。
もしかしたら、本当の自分を見せられる“誰か”が、いたの?
私が知らなかっただけで、もしかしたら……。
だって、身体の関係があった女の人はたくさんいたみたいだし、その人たちには本当の自分を見せていたとしてもおかしくない。
私には見せなかった、本当の恭ちゃんを。
不意に心に落ちてきた影が、胸をチクリと刺す。
まるでやきもちでも焼いているようなタイミングで痛んだ胸に戸惑っていると、そんな私に恭ちゃんが言う。
「実紅も、昔の俺が好きだったんだろ?」
確かにそうなのに。
ずっと、この“恭ちゃん”が好きだったのに……。
違和感を感じてるのは、なんでだろう。



