私を見ながら、口の端をつり上げる恭ちゃんに、予想通りからかわれてるのが分かって、それが面白くなくてぷいと顔ごと逸らした。
この間から、恭ちゃんといると調子が狂う。
しかも、恭ちゃんはいつも余裕綽々な態度なのに、私だけが振り回されている気がして仕方ない。
キスの事もだけど、他もろもろ全部だ。
私なんか、うまく目を合わせる事もできないほど戸惑ってるのに、平気な顔して笑ってくれちゃって。
「じゃあ、積極的な人とでも付き合えばいいでしょ。ついでにキス魔な人なら気も合うんじゃない。
それよりどいて。いつ誰がくるか分からないんだから」
「おまえ、俺の話聞いてたのか？」
『実紅だったら』って言ったのを無視したのが気に入らないみたいで、恭ちゃんは少し顔をしかめていた。
でも、そんなのどうせからかってるだけだろうし、また私だけが本気にとってドキドキ反応しちゃうのがイヤで、気付かない振りをする。
「だって、本気じゃないの分かるもん。
恭ちゃんは、私がどんな反応するのか楽しんでるだけなんでしょ。悪趣味」
