立ち上がった恭ちゃんが、コツコツと靴を鳴らして私に近づく。
縛るとか泣かすとか、恭ちゃんの発する言葉にものすごくイヤな予感がして後ずさる。
でも、一歩下がったところで、膝裏がすぐ後ろにあったベッドにぶつかった。
「わ……っ」
「あ、おい……っ」
ぶつかって、そのまま後ろに倒れそうになって、慌てて恭ちゃんの服を掴んだはいいけど。
結局バランスを崩してベッドに背中から倒れこんだ。
けど、いくら保健室の簡易的なベッドだって言ってもベッドはベッドだし、衝撃はあったものの痛みはなくて。
ケガもしないで済んでホっとして、ぎゅってつぶったままだった目を開ける。
「あぶねー……。実紅押しつぶすところだった。
勘弁しろよ……」
視界に映ったのは、Yシャツと紺色のネクタイと……それを掴んでいる私の手。
どうやら、慌てて掴んだのは恭ちゃんのネクタイだったみたいで。
しかも掴んだまま後ろに倒れちゃったから、恭ちゃんは私に覆いかぶさるみたいな体勢になっていて……。
結果的に、自ら招いたとはいえ、非常に危険な体勢になっていた。
私をつぶさないようにか、ベッドに両肘をついている姿勢のまま動かない恭ちゃんのネクタイから、手をそっと離す。



