恭ちゃんがどういうつもりで言ってるのか分からなくて、聞き返そうとしたけれど。
それより先に「寝てろ」とベッドのカーテンを引かれた。
カーテンの向こうに真っ白なベッドが現れて、顔をしかめたまま恭ちゃんを見る。
「だから、熱があるなんて恭ちゃんの嘘でしょ。結果的に事務長も騙しちゃったし、罪悪感でとてもじゃないけど眠れないし」
「ああ、大丈夫だろ。事務長は多分、俺の嘘に気づいてるし」
「えっ……なんで?!」
「なんかそんな気がするだけ。あの人、不思議な人だよな。全部を悟ってる気がする。
人間、歳とればあんな大らかに優しくなれるもんなんかな」
そう言う恭ちゃんの顔が優しかったから、なんだか私も嬉しくなる。
恭ちゃんが事務長の事気に入ってるんだって分かったから。
「そういえば、恭ちゃんと事務長ってどっかで仕事が一緒だったの?」
「俺が新任の時、二年間一緒だったんだよ。だから、三年ぶりになる。
まさかまた一緒に仕事できるとは思ってなかったけどな」
「色々お世話になったの?」



