甘い愛で縛りつけて



「“いってきますのキスは絶対しなくちゃダメ!”だっけ?」
「もうっ! 忘れてよ、そんな昔の事」

いつかの手紙の文面を思い出して笑う恭ちゃんを恥ずかしくなって止めたけれど。
そんな私の態度がSっ気魂に火でもつけてしまたのか、恭ちゃんは面白がって続ける。

「あと、“実紅以外の女の子と手繋いじゃダメ!”とか」
「だからっ……もうっ! 恭ちゃん、昔はそんな意地悪じゃなかったっ」
「いや、あん時から変わんねーって。ただ言わなかっただけでいっつもおまえの事からかいたくて仕方なかったし」
「……ねぇ、なんで」
「そういえば熱があるんだったな、実紅は」

なんで、本当の自分を隠してたの?

疑問をぶつけようとした私の声を、恭ちゃんが遮る。
はぐらかされたのが分かったから、少しむっとしたけど……すぐにそれとは違う理由で顔をしかめた。

熱があるんだったなって、どういう意味だろう。
熱があるなんて言ったのは、恭ちゃんが女子生徒への対応が面倒くさくなって抜け出したいが為の嘘なのに。
私は熱もなければ体調だって悪くないし、それは恭ちゃんだって知ってるハズだ。