甘い愛で縛りつけて



思い出そうと記憶を辿っていると、急に影が落ちた。
俯いていた視界に恭ちゃんの靴が飛び込んできて、慌てて顔を上げる。

「そういえば、実紅が好きだったのは、品行方正の“恭ちゃん”だったっけ。
ああ、だから保健室入るまでやけにおとなしかったのか。俺が昔の口調で話してたから」
「別に、そこまで好きだったわけじゃないしうぬぼれないで。
恋に恋してた年頃っていうか」
「嘘つくなよ。毎年毎年、バレンタインに分かりやすい本命チョコくれてたくせに。
あんだけバレバレな態度取られて分からない男なんかいるわけねーだろ」

恭ちゃんの言う通り、あの頃の私は恐ろしく積極的だった。
傷付く事も何も知らなかっただけに、毎日恭ちゃんの周りをうろついて。
小学校の時なんかラブレター紛いの物を何通も渡してた気がする。

“恭ちゃんのお嫁さんになりたい”とか。
“結婚したらこんな家に住みたい”とか。

それだけされて気付かない人なんて……まぁ、間違いなく絶対いない。
むしろ、私の記憶が確かなら、好きだとか毎日のように言っていたぐらいだし。

まさに若気の至り。