『……実紅?』
口もとを押さえると、異変を感じとった恭ちゃんが私を呼ぶ。
『気持ち悪い……』
『あ?』
『吐く……』
『吐……って、まだ酒が抜けてなかったのか?』
『うぅ~……』
その後は、意識がもうろうとする中、恭ちゃんにトイレまで連れていかれて、背中をさすられて。
吐き気が収まったのは、随分長いことトイレで過ごした後だった。
私が苦しんでる間、ずっと背中をさすってくれていた恭ちゃんは、絶対に怒ってたり不機嫌だったりするって思ったけど。
落ち着くまで横になってた方がいいって、ベッドに寝かせてくれて。
二時間くらい寝て目が覚めると、大丈夫かって心配そうに聞いてくれた。
夜遅くなっちゃったけど、泊まるよりはいいだろうって家にも送ってくれて。しかもおんぶで。
フラフラの頭で、なんだ、昔と変わらないじゃんって思って少し嬉しくなった。
昔と同じで、恭ちゃんが優しかったから。
昔と同じように、家まで送ってくれたから。



