甘い愛で縛りつけて



恭ちゃんが昔から浮かべるあの表情が、私の頭の中いっぱいに広がるせいで、他の事なんて考えられない。
自分の危機的状況さえも。

何よりも、恭ちゃんを優先させなくちゃダメだって、私の中の誰かが叫んでいるみたいだった。

『今どういう状況なのかくらい、もう私にだって分かってるよ。
自業自得な事も、やられちゃっても仕方ない状況だって事も、今すっごく危ないって事も。
分かってるけど……。
そんな事より、恭ちゃんが気になるんだもん……』

見つめる先で、恭ちゃんは驚いたみたいな顔をしてから軽く息を吐き出した。

『押し倒された状態で大した抵抗もしないで、俺の事が気になるとか。
やられても文句言えないだろ。
警察行ったところで、恋愛沙汰のトラブル扱いしかされなくなるし』
『いいよ、別に』
『いいって、おまえ』
『だって恭ちゃん、本気じゃない。
本気で私を傷つけようとなんてしてない』

キって睨むように見つめながら言うと、恭ちゃんは少し驚いて。
それから、誤魔化すみたいに笑う。