先週、うっかり恭ちゃんとホテルに入った、あの後。
『そのかわり、教えて。
なんであんなに切なそうに微笑むのか』
そう言った私に、恭ちゃんは黙った。
驚きと困惑の混ざったような表情をしたまま。
そしてその後、それを誤魔化すみたいに軽く笑って。
『したければしろなんて、間違っても言うな。
どんな優しい男でも、実紅くらい簡単に押し倒してヤレるんだからな』
『分かってるよ。そんな事』
『分かってないから、今この場でそんな言葉が出てくるんだろ。
今おまえ、襲われてるって分かってるか?』
『うるさいなぁ、もう!
恭ちゃん、襲ってるくせに私にそんな注意するとかおかしいよ』
私が言った事が正論だと思ったからか、恭ちゃんは少し黙っていた。
けどその後、納得いかなげに私を見た。
『確かにそうだけど、同意してどうすんだよ。
俺もおかしいけど、おまえもおかしいだろ』
襲い掛かりながら私の心配をする恭ちゃんと、襲われながら恭ちゃんの心配をする私。確かにおかしい気もしたけど。
それ以上に、恭ちゃんの事が気になって仕方なかった。



